ポストカード。

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美術館や博物館が好きだ。

それ以上に、記念に買うポストカードが大好きだ。

本当は、その他のグッズが欲しいのだけれども、お金がかかるし、かさばるな。

と思うと、ポストカードは100円程度だし、紙一枚というスマートさ。

そして、眺めていると、その時のことを何となく思い出せるから不思議だ。

はっきりではなく、曖昧に、というのが魅力なのだ。

 

裏面に、メモ書きしているわけじゃないけれど、何となく頭に浮かぶ風景。

何年、何月、何日とはっきりとは答えられない。

いつ、どこで、何の展示に行ったかくらい。

帰りにここに寄ったなぁとかのおまけ付き。

その朧げさがちょうどいい。

 

おまけの記憶には、良いものもあるし、悪いものもある。

その時の心持ちも思い出してしまう。

楽しかったこともあれば、辛かったこともある。

写真やビデオは、残酷なまでに鮮明で、感情がリフレインして辛くなる。

ポストカードは、ノイズがかかったリピートって感覚だから、そんなこともあったなくらいでちょうど良いのだろう。

 

人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思う。

きっと、浅いから、生きていけるんだろう。

写真やビデオに思い出を残すのも良いけれど、ポストカードに記憶を何となく留めておくのもまた一興。

これからも、その時々の記憶や感情と一緒に、ポストカードを集めていこう。

映画。

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映画って本当にいいもんですねぇ。

金曜の夜は映画と決めている。

時間があれば、土曜も日曜も。

何を観るのか、気まま、思うまま。

 

"Lucky "、"わたしはダニエルブレイク"、"家へ帰ろう"。

今の心境なのか、おじいちゃんムービーが多い。

強面だけど心優しいおじいちゃん。

旅に出て友人に再会するおじいちゃん。

もう一度恋するおじいちゃん。

そんなグランパ達に共感する週末を重ねる。

 

歳を取るのも悪くないなと、思うようになってきた。

「老いる」っていうのは、喜びとか、渋みとか、哀愁とか。

そういうものを見に纏っていくことなんだろうなと感じるようになった。

 

映画のおじいちゃんは様々な生き方をしている。

金持ちもいれば、貧乏もいる。

偏屈もいれば、素直もいる。

一人暮らしもいれば、家族暮らしもいる。

すごいなと思うのは、役者さんがそういう人生を歩んできたという顔をしていること。

 

顔は人生の履歴書っていうけれども、自分はどんな顔になるんだろう。

というよりは、今、どんな顔をしているんだろう。

未来に備えたり、将来に不安を覚えたりするより、現在を楽しむことと目の前のことでうろたえる方が大事だよなと思う。

未来に備えなくて、後悔しているおじいちゃんも映画にはいたけれども。

C'est la vie.

それも人生だ。

 

いや、映画って本当にいいもんですねぇ。

ヒント探し。

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なんで、読書をしてるんだろう?

ふと思う。

作者が好きだから、文字フェチだから…

語彙を増やすため、知識を得るため…

いろいろあるのだけれども、どこかで答えを探していたような気がする。

 

小説を読んでいると、自分では言い表せなかった心情を代弁してくれることが多々ある。

そうそう、こう言いたかったんだよな。

そんな台詞に出会えた時の感動も楽しみの一つでもある。

裏を返せば、自分の言葉っていうのを持ってなかったんだなと思う。

 

省みると、人と会話している時は、本から引用してばかりいた。

そこに、自分の気持ちが入っていたかというと疑問だ。

そんなことを繰り返している間に、本に書いてあるフレーズが正しいと考えるようになっていたのかもしれない。

いつのまにか、アイデンティティを失っていた。

ああ、オレは空っぽなんだなと気が付く。

 

もちろん、本は疑問を解消するためのツールだ。

だけれども、答えは書いていない。

載っているのは、ヒントだけ。

そこから、自分なりの言葉や答えを導き出すことが読書なんだと思う。

 

本を貪るように読んできたのは、答えを求めてすがっていたのだと思う。

自分のことが、わからなくなってしまったから、見失ってしまったから。

それは今も変わらないのだけど、自分の言葉を見つけていきたい。

最初は、引用してもいいし、真似てもいいから。

 

自分の言葉を見つけたなら、ボソボソ喋るクセも治るのかな。

ただの東北訛りと滑舌の悪さな気もするけど。

でも、なまっててもいいから、どもってもいいから、堂々と自分の言葉で話せたらいいなと思う。

ヒント探しは、いつまでも続きそう。

ウクレレ。

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ウクレレを手に取ってみた。

ベニヤ板で、おもちゃのような楽器が家に来てから一か月。

毎日、触れている。

三日坊主になるかと思っていたのだけれども。

隠された才能が開花するわけでもなく、一本指で押さえられるコードをいったりきたりするだけ。

でも、ジャカジャカすると我を忘れられる。

 

きっかけは「Blutch」というフランス語で字幕も無い映画。

おっちゃんが旅をしながらバイオリンを弾く姿を見てて、ただただ楽しそうだなと感じた。

バイオリンはキャラじゃないし、ギターは大き過ぎる。

そこで、白羽の矢を立てたのがウクレレ

 

Blutch

Blutch

  • 発売日: 2019/08/30
  • メディア: Prime Video
 

 

はっきり言ってヘタクソである。

ジャイアンの歌声よろしく、聴き苦しい。

でも、誰にも見向きもされず、自分自身も何も考えず、ただ弾いてる。

時間を忘れられる。

そう、クライミングをしている時と同じように。

 

楽器なんて高校生の音楽の授業以来で、苦手だし嫌いだった。

だけど、大きな違いがある。

学校で演奏する音楽は、ミスが無いように、上手く音が出るように、ビクビクしていた。

独りで奏でるウクレレは、テンポ悪いし、リズム感はないけれども自由だ。

楽器を苦手だけど、少し好きになれた気がする。

 

省みれば、授業でも間違えていいから、調子外れの音でいいから、笑いながらやってたら良かった。

何をやるにせよ、うまくやろうとか、恥ずかしいとか、そういう感情を捨てられたら、楽しめるもんだと今更ながら気付く。

ウクレレもどうなるかわからないけど、楽しいと感じるなら続けるし、つまらなくなったら止めようと思う。

つまらないことをおもしろくする術を身につけたい。

 

一人でツアーに行った夜、車やテントで弾いてみたい。

一年続いたら、Jack Johnsonのスコアを買いたい。

ハワイに行ったら、ハワイアンコアのウクレレを手にいれたい。

出来るか否やわからないけど、肩肘張らずやっていこう。

Strum & Sing Jack Johnson: For Ukulele - Vocal

Strum & Sing Jack Johnson: For Ukulele - Vocal

  • 発売日: 2011/11/01
  • メディア: ペーパーバック
 



バラクーダ。

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スムーズな足入れに、快適な履き心地、非対称なレースアップシステム、網の目状のトゥーラバーを搭載するなどインドアだけでなくアルパインやクラックなどのクイミングにも対応するモデルです。0.8㎜のミッドソールを内蔵しエッジング性能を更に確かなものしてくれます。

http://climberseqt.blog.shinobi.jp

 

気心の知れた仲。

ラクーダとはそんな間柄である。

ターンイン•ダウントゥなしの幅広いシューズ。

なんてことのないシューズがフィットすることを教えてくれた。

北は北海道から、南は九州まで旅し、いろんな課題を一緒に落としてきた。

それなりの成果を出せたのは、この存在が大きかった。

 

これまでは、シューズの性能に振り回されるような登り方をしてきたと思う。

登れたのは靴のおかげ、登れないのは靴のせい。

省みると、自身の登りに他人行儀だったかなと。

ラクーダを履いている時は、自分の意思通りに踏んでいる感じる。

スタンスに立てるも、立てないも自分の実力と、当事者として向き合えてた。

 

Heか、She かというと、彼女だったと思う。

相棒というよりは恋人。

一緒にいれば、ただただ楽しい。

登れたら当然嬉しかったし、登れなくても「ま、いっか」とあきらめられた。

良くも悪くも、それが実力だよなと。

相思相愛とはいかなくても、以心伝心はできていたかな。

 

だから、別れが近いことも知っている。

トゥーラバーが剥がれ、穴が空きそうなこと。

ソールが擦り減り、エッジングに陰りが見えていること。

だけど、もう少し付き合って欲しい。

岩場に出向く度にそう思う。

あと一日、もう一日が続けばいいなと。

 

過去形じゃなくて、現在形の言葉でいつまでも語りたい。

だけれども、そうもいかないのが世の中。

とはいえ、まだ未来形の話をする時でもないかな。

今少し、二人の時間を楽しもう。

シンプルに、ダイレクトに。

旅に出る前の倦怠感。

出てしまえば、どこかへ吹き飛んでしまうのだけれども。

なんだか、今回は気持ちと腰がどんより重い。

だけれども、家のいるとさらに気が滅入るのもわかってる。

何とか、奮い立って飛び立つ。

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10数年ぶりの塩原。

いつか登りたいと思っていた千。

真ん中を真っ直ぐ登るラインはきれいだ。

何回か触っていると、雨が降り始める。

トップアウトは難しそう。

ムーヴ作りに終始するも、なんだかチグハグでつながらない。

晴天だったとしても無理だった気がする。

気持ちは、空よりもどす黒い。

ここで続けてもケガするだけと岩場を去る。

冷えた体と心を千本松牧場のホットミルクだけが癒してくれる。

栃木を抜けて埼玉を目指す。

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ささくれた気持ちを朗らかな宿とスタッフがなだめてくれる。

ゆっくり歩く川越はノスタルジー

自分の原点となった場所を支える友人は、世の中の不条理に中指を立て。

同じ原点から飛びだった先輩は、アブラとケムリでテカテカになった帽子を被っていた。

話を聴いてもらったら、すうっとしてきた。

軽くなった体と心で群馬へ向かう。

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一人で車にいると、いろんなことを考える。

昔は、あれがしたい、これがしたい。というヴィジョンが溢れ出てきたのだけれども、今は何も思い浮かばない。

悩みはイバラのようにふりそそぐ。

そんな言葉を残して駆けていった山田かまちさん。

肉筆のノートは、エネルギッシュで、心を打つ。

今は、やりたいことが浮かび上がるのをじっと待つ時なんだろう。

"ためらうこと? ない。 おびえること? ない。 ただ、  書けばいい。"

そういう思えるにはまだ早いようで。

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旅の倦怠感はどこへやら、満足感で満ちていく。

宇都宮で餃子を食べながら我思う。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」

もっとシンプルに、ダイレクトに、登れたらいいし、生きていけたらいい。

不器用さが邪魔をするけれども、不器用だからこそ真っ直ぐに。

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悩みはイバラのようにふりそそぐ―山田かまち詩画集
 
井上ひさし伝

井上ひさし伝

 

 



 

美学。

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自分のやりたいことを追求する。

誰かに、成し遂げたいわけでもなく、認められたいわけでも、勝ちたいわけでもなく。

それがモチベーションの原石なんだと思う。

「登りたい課題が、登れた後に、その課題が難しかったらいいよね。」

そう諭されたことがあるけれども、わかったようでわかってなかった。

でも、ようやく腑に落ちた。

結果なんて、後から付随してくるものだ。

 

どうにか登れないものかと思っていたカンテ。

試行錯誤しているうちに、ピカッとひらめく。

壊れそうなフレークを使えばいけるんじゃないかと。

叩いてみても音は重い。

ランディングは悪くなるけど、大丈夫だろうと高を括る。

予想通りに、マントル体制に入った直後。

「あっ」と思った時には後の祭り。

 

木に引っかかれ、岩にすりおろされる。

いつもは、変な落ち方をしたら終わりにするのだけれども、気持ちも、アドレナリンもひかない。

パンプした腕を伸ばし、呼吸を整え、登り返す。

件のフレークをアンダーで引きながらリップをとらえる。

その瞬間、フレークが浮く。

冷や汗をかきながら、岩上に立つ。

登りたい課題は、たまたま高く、ランディングが悪い2級だったんだなぁという自己満足感に満たされる。

グリコのおまけのように、登れてからグレードも理由もついてくる。

そんなもんなんだな。

やろうと思った時には、まだわからないものだらけ。

 

画一的な価値観を意に介さず、評価基準を自分でつくり、自分で「美しい」と認めるものを追求するのがアカデミズムの世界です。それはもう美学の領域であり、個人的な美学を追求している以上、他人にどう思われようが気にならない。

「日本進化論」落合陽一

 

人に合わせなきゃいけない物事もあるけれども、自分の美学を追求すべき物事もある。

そのためには、自分の美学がなにかを知ることから。

ハードさなのか、スリルなのか、リスクなのか、何なのか。

少しわかった気がする。

 

「美しいと感ずるもの」は、その人の固有のもの。

自分の美学を大切にする以上、他人の美学を尊重しなくてはならない気がする。

少なくとも邪魔をしないように。

法律や社会のルールを犯さない限り。

腕に切り傷、肘にすり傷、心に気付きが残ったカンテでした。

日本進化論 (SB新書)

日本進化論 (SB新書)

  • 作者:落合 陽一
  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: 新書