旅に出る前の倦怠感。
出てしまえば、どこかへ吹き飛んでしまうのだけれども。
なんだか、今回は気持ちと腰がどんより重い。
だけれども、家のいるとさらに気が滅入るのもわかってる。
何とか、奮い立って飛び立つ。
10数年ぶりの塩原。
いつか登りたいと思っていた千。
真ん中を真っ直ぐ登るラインはきれいだ。
何回か触っていると、雨が降り始める。
トップアウトは難しそう。
ムーヴ作りに終始するも、なんだかチグハグでつながらない。
晴天だったとしても無理だった気がする。
気持ちは、空よりもどす黒い。
ここで続けてもケガするだけと岩場を去る。
冷えた体と心を千本松牧場のホットミルクだけが癒してくれる。
栃木を抜けて埼玉を目指す。
ささくれた気持ちを朗らかな宿とスタッフがなだめてくれる。
ゆっくり歩く川越はノスタルジー。
自分の原点となった場所を支える友人は、世の中の不条理に中指を立て。
同じ原点から飛びだった先輩は、アブラとケムリでテカテカになった帽子を被っていた。
話を聴いてもらったら、すうっとしてきた。
軽くなった体と心で群馬へ向かう。
一人で車にいると、いろんなことを考える。
昔は、あれがしたい、これがしたい。というヴィジョンが溢れ出てきたのだけれども、今は何も思い浮かばない。
悩みはイバラのようにふりそそぐ。
そんな言葉を残して駆けていった山田かまちさん。
肉筆のノートは、エネルギッシュで、心を打つ。
今は、やりたいことが浮かび上がるのをじっと待つ時なんだろう。
"ためらうこと? ない。 おびえること? ない。 ただ、 書けばいい。"
そういう思えるにはまだ早いようで。
旅の倦怠感はどこへやら、満足感で満ちていく。
宇都宮で餃子を食べながら我思う。
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」
もっとシンプルに、ダイレクトに、登れたらいいし、生きていけたらいい。
不器用さが邪魔をするけれども、不器用だからこそ真っ直ぐに。