Keep Tahoe Blue.
どこかへ行きたいから旅が生まれる。
心が先立ち、体が後追う。
彼の地で、心身が揃った時が旅の始まり。
「みんなでアメリカに行くんだって。」
「行ったらいいじゃん。」
そんな会話から旅が生まれた。
二年前からパスポートは未更新。
上司に相談もしていない。
だけども、指がおのずとチケットをポチる。
オンラインでパスポートを申請する。
仕事のスケジュールを綿密に練る。
せっかくだからと体を絞る。
どんどん、気持ちが西海岸に向かってく。
古いパスポートに穴が空く。
会議と出張を前倒す。
食事を見直し、トレーニング。
もはや、心はもうカルフォルニアに着いている。
新しいパスポートを手に取る。
内外に不在を詫びる。
体脂肪が落ち、筋肉は引き締まる。
後は、体を運ぶだけ。
新幹線、成田エクスプレスを乗り継ぎ空港へ。
搭乗手続きにまごつきながらも飛行機に乗り込む。
あと半日もすれば、心と体がレイクタホで落ち合う。
旅が幕開ける。
二年ぶりのサンノゼ。
不思議と久しぶりな感じがしない。
故郷というか、学び舎を訪れるというイメージ。
胸が高鳴るというよりは、心が休まる。

相変わらず、英語は分からない。
話しかけれて、しどろもどろになったり。
計算ができず、小銭を数えてもらったり。
以前なら冷や汗かきながらだったけど、堂々とというか図々しく。

多分、諦めたというのか、学んだのだと思う。
できなくてもいいんだってことを。
Not Perfectでいいんだってことを。
できることをやればいいんだってことを。
何でもそう。
結果オーライ、楽しめばればいい。
焦ったり、悔しかったり、腹立たしかったり。
それすらも思い出となると割り切ろうと思う。
アバウトな英語とジェスチャー。
それで、ハンバーガーは買える。
In-N-outのさっぱりとしたパティ、しっかりした野菜。
アメリカでしか食べられない味を堪能。

背伸びしたハイグレードへのトライ。
震えながらのハイボール。
登りたいラインでの本気落ち。
指の限界までクライミングをエンジョイ。

レスト日は、トレッキング。
エメラルドベイを周回するRubicon Trail。
間近で見るレイクタホは、深いBlue。
というよりは、これがTahoe Blue。

色素の濃淡じゃ表せない色。
その土地の大地と水と光が醸し出すカラー。
ここにしかない自然と一つとなりたくて入水。
冷たく澄んだ湖で、歩き火照った体をクールダウン。

朝と夜は、自分が食べたいからシェフ役に出しゃばる。
といっても、卵か肉を焼くくらいだけれども。
その土地のものを食べることが楽しい。
肉も、野菜も美味しい。

ポーク、チキン、ビーフ、ベーコン、牛乳、ヨーグルト。
トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、ジャガイモ。
肉や乳製品は、脂肪が少なくあっさり
野菜は、炒めたり、茹でたりするとらしさが出る印象。

主食は、パンとベーグル。
種類が多彩で、選ぶのも楽しい。
ナッツや雑穀が散りばめられたのが好き。
焼かずに生で食べると、生地の味が楽しめた気がする。
蕎麦、うどん、素麺の麺類。
鍋キューブに、インスタント味噌汁。
疲れた体、冷えた体を出汁が温かく包んでくれるイメージ。

どの国のあれが美味いという話は良くある。
というよりは、それぞれの味があるというのが私見。
おいしさは、個人の好み。
好きか嫌いかを自分の舌で判断することが大事と思う。
そんなツアーのハイライトがWhite line.
傾斜の強い岩の真ん中を行くライン。
初日に見学した時に、ビビッときた。
アメリカンクライマー曰く、「タホのMidnight lightning.」
ホールドとムーブをみんなで紐解く。
下部は、ドロップニーの連続。
中間は、ガストン&ガストンは整体。
何となく形が見えたところでタイムアップ。
くすぶったまま宿に戻る。
そんな自分を見かねて、翌日のトライを提案してくれる仲間。
その思いに応える登りをしたいと泣きの二日目。
着いてまもなく雨雲が到来。
でも、気温は低くて、持ち感は抜群。
中間までは安定してるし、後はマントルだけ。
試行錯誤して、これだというムーブを定める。
スタートから右カチをとり、キョンで左ピンチをホールド。
スタンスを上げて逆方向に切り替えしてガストン。
体が剥がされるのを我慢して、足をスタートホールドへ。
ガバを二つ経由し、三角錐を抑えてのヒール。
アンダーを中継して、カチをとる。
そして、中継したアンダーホールドに寄せてのマントル。
全身に力を入れ。
体が少し上がるも、力尽きて落ちる。

悔しいという思い。
力を使い果たした充実感。
久しぶりに、そんなクライミングが出来た。
それもこれも、仲間があってこそ。

そういう思いや仲間は成長の糧となる。
まだ、青臭い部分が残ってたのがが嬉しい。
それと、地味なトレーニングの成果が内面にも外面にも表れてる。
少しだけ、自分が誇らしい。
難しいグレードは登れなかった。
多くの課題は多くはなかった。
けれども、たくさん笑った。
Vの数よりも、笑顔の数が多いツアー。

二年前はこれが最後と思ってた。
でも、こうしてカルフォルニアの空の下で笑ってる。
二度あることは三度ある。
また、レイクタホに戻ってきたい。

旅は、体が先に日常に戻り、心が帰ってきて終わりなんだと思う。
心はまだアメリカでも、体が先に日本に帰ってくる。
そして、徐々に日常に心身共に戻っていく。
そうやって、旅は幕が降りる。

レイクタホをレンタカーで発つ。
サンノゼから飛行機で離れていく。
東京から新幹線で戻っていく。
家まで歩いて帰る。
また、明日から仕事が始まる。
いつもの日々へと溶け込んでいく。
でも、いつ旅に出れるかなと考える。
心がそわそわしている。
Keep Tahoe Blue.
またいつか、レイクタホの青を見にいこう。
Keep Myself.
その時まで、自分の青臭さを残しておこう。
夏風邪。
夏風邪を患う。
数日前から喉がイガイガ。
まずいなと思ってると鼻水も出てくる。
昨日からは咳き込むように。
ジッとしているのが一番なんだろう。
けど、晴れた土曜日に外にいない方が不健全。
頭痛はロキソニンでやり過ごそう。
病は気から。
アプローチを歩いていると汗と鼻水の区別がつかない。
息が切れているのか、咳が出ているのかわからない。
ただ、苦しいとは感じない。
風の時は、静かなところで、好きなだけ遊ぶ。
それが、一番の薬。
いつもと違う道で上るけど、着くのは同じ場所。
色々と歩いたけれど、目新しい発見はがない。
そろそろ腰を据えて、未登の岩と向き合う時かな思う。
なので、そっとしておいたボルダーで遊ぶ。
明確なカチがあるから楽勝と思っていた一個目。
スタートのバランスが悪くて面白い。
アンダーで引き上げ、無理やりカチる。
後は、ガバフレークで駆け上がり完登。

雨の日に触って敗退した二個目。
ハンドジャムかと思っていた、短いクラック。
アンダーでどすこいどすこいなムーブ。
リップ取りもパワフルな稽古的な課題。

不思議な形をした三個目。
カンテを挟めば楽勝と思いきやバランシー。
黒粒スタンスを踏んでヒールフック。
クライムダウン有り、下に岩有り、スパイシー。

車に戻ると夏風邪は何処かへ。
なんて事はなく、鼻水と咳が苦しい。
だけど、山の疲れで、良く寝れそう。
アウトドアは、風邪の特効薬に違いない。
梅雨、明けましておめでとうございます。
南東北の梅雨明け。
お祝いのような青空。
力強い太陽。
夏の幕開け。
連日の暑さで、身体はサマーモード。
森に入れば、陽は和らぎ、風が涼しい。
アプローチも心地良い。
新緑の美しいエリアへ。

まずは、ハダカデバネズミみたいな岩。
とりあえず、出歯からスタート。
スタンスに乗れば、ガバクラックとカンテ。
ちょっと物足りない。
出歯無しスタートにトライ。
ガバがあるのでスタートは問題無し。
けれども、身体を引き上げきれない。
ヒールなら何やら試すけど、歯が立たない。
左のかき込みが強ければいけるのだろうけど。
あとはフレキシブルな柔軟性。
無いものねだっても仕方ない。
夏の暑さのせいにして撤退。

少し下って、良さげなクラックに手を入れる。
ハンドサイズだから行けそうな予感。
左手、右手、両手のジャムを決める。
左足を捻り込んでリップへ。
スローパーだけど、ヘコみがあるし返せそう。
もらったと思ったけれどもズリズリと落ちる。
左半身が乗っているに、のっ越せない。
意外と角度があって吐き出される。
右手も返しているけど、右半身が上がらない。
もう、根っこ掴んじゃおうかな。
という、誘惑に負けそうになる。
苦肉の策で、身体半分が乗ったらジャム。
すると、右手が刺さったままなら返せそう。
落ちたらポッキリだよなぁ。
と思いながらも少しずつ身体を引き上げる。
良いクライミングが出来た。

汗と、泥と、充実感にまみれての下山。
プシュっと炭酸水を煽る。
梅雨とお別れの一杯。
今年も暑い夏になりそう。
飛んで火に入る夏の虫。

暑いと増すのは、食欲と岩のモチベーション。
素直に室内で過ごした方が合理的。
それは重々承知。
だけども、自然と足は岩場に向かう。
梅雨の湿気も、夏の虫も不快そのもの。
でも、時たま吹く爽やかな涼風。
偶然に出会うボルダー。
それが自分を駆り立てる。
今日はダイクがキレイな岩と遭遇。
課題を落とすだけなら、冬がベストシーズン。
岩を楽しむなら、春夏秋冬、オールシーズン。
「自ら災難や災いに向かって飛び込んでいくこと」を意味することわざ
類は友を呼ぶ。

友達が多くはないし、単独行動が好き。
協調性が無いのか、社交性が低いのか。
ともかく、団体行動が苦手。
バレーボール部に入らず、陸上部で好き勝手に走ってれば良かった。
そう今でも思う。
とはいえ、ちょっと一人では怖いなと思って、友人に声をかけて玉川ボルダー。
下地が悪くてもスポッターがいれば心強い。
信頼できる人なら尚更。
前回のトライでムーヴはわかってる。
後は、度胸。
手を伸ばせば届くはず。
と、アップをしながら思案する。
いざ、課題を見上げると自信を無くしかける。
なかなか登る気持ちにならず、周辺をうろちょろと。
100m走のスタートの緊張感。
いつも、失敗するんだよなと暗くなる。
とりあえず、緊張をほぐすためのワントライ。
位置を間違えて、ちょっと甘いホールドからアンダーへ。
スタンスどこだっけと思い出しながら、カンテを良いところに持ち替える。
一、二の三で、ピンチにデッドポイント。
こないだよりかかりが良いなと感じつつ、ヒールをかます。
右手をガバカチ、左手を気持ち悪いラップで持ち、リップに伸びる。
ヌメッてる。
と焦りながらも、這い上がる為にスタンスにトゥーを立てる。
苔っぽいなぁと思いながらシューズとスポットを信じる。
ガバを掴んで必死にマントル。
足と心が震える。
一人では登れなかったなと思う。

スポットしてくれた友人に感謝。
自分と全く一緒ではないけれども。
何か共通項があるんだと思う。
Birds of a feather flock together.
同じ羽の鳥は群れる。
類は友を呼ぶ。
また、群れましょう。
心の故郷。
久しぶりの沖縄。
二年という人生の一割にも満たない時間。
濃密だったというか、時間がゆっくり流れていたというか。
自分の核を育んだ期間だったと思う。
だから、行くというより、帰るという感覚。
旅行というより帰省という面持ち。

今回は、人生初の輪行。
憧れはあったことけれど、実行してこなかった。
面倒というよりは、怖かったのだと思う。
何かあったら嫌だなと。
タイヤがパンクしても死にはしないか。
なんて考えたら、やってみるかという気に。
10代にやっておくことなのかもしれない。
40歳になって初めてというのもこそばゆい。
今さら、なんていう感情もある。
けど、今さらだから、これから。
昔出来なかったから、今こそ。
そんなわけで、空港からペダルを漕ぐ。
微妙なアップルダウンの多い沖縄。
サドルに座ったり、立ったり。
景色がゆっくり、なだらかに流れる。
不安はどこへやら。
楽しさが込み上げてくる。

そのまま、具志頭浜へ。
変わらない砂浜にホールド。
それを噛み締めながら登る。
体が覚えており、自然とムーヴが出る。
日暮れまで、強傾斜をガシガシと。

暗くなってからホテルに到着。
汗をタオルで拭ったら、友人と乾杯。
しょっぱめのフーチャンプルーで塩分補給。
冷えたオリオンビールで喉を潤す。
近況を交換し、再会を約束。
きっと、またいつかと。
心地良い波音のリズム。
窓を開けると、爽やかな潮風。
気持ち良い沖縄の目覚まし。
ポークたまごで、腹をこしらえ出発。

久しぶりに会う南の師匠。
熱い話に花が咲く。
自分のスタイルを貫くこと。
それだけは大事にしようと思う。

帰りがてら、中城城跡を見学。
石のアーチが美しい。
住んでいた時は、見る余裕が無かった。
というよりは、視界が狭かったのだなと思う。
今からでも、いろいろ見てやろう。
It's never too late.

最終日はどうしようかと考える。
やっぱり、頭に浮かぶのは具志頭。
ポークたまごとカチューユで朝ごはん。
南回りでサイクリングすると決めて朝駆け。

知念岬で一休みして、浜に再上陸。
今回のツアーで登ろうと決めてたステージ岩。
ボルダーというよりフリーソロ。
息が静まるのを待ちつつオブザベーション。
のっこし以外は大丈夫かなと検討をつける。
見た目通りのガバをつないで高度を上げる。
ラップ持ちをして腕をシェイクしたり。
フラッキングしてレストしたり。
落ちたらマズい高さでも気持ちはクール。
リップ手前で割と悪いなと手に汗をかく。
落ちたら死ぬし、後戻り出来ないし。
ホールドを一つ一つ確認し、行きつ戻りつ。
トポに上部は脆いとあったことが頭によぎる。
パンプはするし、心拍数も上がる。
落ち着いて、深呼吸して、体と心を整える。
ちょっと甘いなと思いながらもマントル。
フィジカル的なピークを超えていると思う。
でも、メンタル的なグレードを突破できたかなと感じる。
パワーだけで登れてるなら、20年前に出来てたはずだから。
総合的には、まだ成長出来るのかもな。
と思いながら、震える足で、雄叫びを上げ、クライムダウン。

後は、空港まで約20kmをのんびりと。
対向車線のライダーと「ヘイ!」と挨拶を交わす。
ガソリン代はかからない分、エネルギー補給はしっかり。
辛いけれども楽しい。
輪行にチャレンジして良かった。

ゆし豆腐を食べて空港へ。
安心して居眠りしてたら呼び出せれての搭乗。
仙台空港までの三時間、旅を振り返る。
また、沖縄に帰ろう。
いつになるか分からないけれども。

死んだら、少しばかり、灰を美ら海に撒いてもらおう。
だって、沖縄は心の故郷だから。
青い空。

友人に誘われて、玉川ボルダーへ。
最近は、ベースでしか登ってばかり。
いろいろと凝り固まってるなという焦燥感。
何処かへ遠征するのがアンチドーテ。
なので、渡りに船。
それが、知らない場所となれば尚更。
東北中央道を経て新潟方面へ。
アクセスは、ほぼほぼ一本道。
後付けされたような横道に入る。
看板に導かれるままに山荘へ。
登山案内のある駐車場が岩場の入り口。
アプローチは、ブナが力強く美しい遊歩道。
幹の太さ、大量のトチの実に山深さを物語る。
小橋を渡ったら、沢へと降りていく。
ワイルドで滑りやすいガレ場がまた楽しい。
降りると、ドドーンと鎮座している天空岩。
一眼で、これだなとわかる明確なホールド。
空に向かって駆け上がるようなライン。
登りなさいと訴えてくるボルダー。
スタートはポジティブ。
カンテも、中間のアンダーも前向きな持ち感。
左のピンチ取りが核心かと思いながらトライ。
下地は悪くも、真っ直ぐに落ちる。
それを確認してから、大きくムーブを起こす。
左ピンチをホールドしたら、さあ勝負。
ヒールを決め。
右手でカチを抑え。
リップのホールドに手を伸ばす。
それだけ。
それだけなのに、ビビって手が出ない。
一度、ヒールが外れ、腰をぶつけると余計に。
フィジカルは難ないのに、心がついてこない。
魅力的な岩が多々あるけれども、心はいずこ。
セッションも我慢して、帰り際に懸ける。
コンディションも、気持ちも乗るかなと。
裏腹に、暑くて脱水、腰もズキズキ。
天気は持ちそうだけれど、心中は積乱雲。
そろそろと、そそくさと、再び天空岩。
涼しくなるどころか、湿度は上昇、やや滑る。
水不足で頭痛はするわ、腰は悲鳴を上げるわ。
でも、モチベーションだけはある。
さあ、もう一度、勝負だ。
1回目、リップに届かず。
2回目、核心を取り損ねる。
3回目、足の位置を修正するけど伸びず。
4回目、トゥーか、ヒールか逡巡し落ちる。
シューズの紐が切れたところでタイムアップ。
最後まで、ハートが届かなかった。
全力を出し切れなかったのが口惜しい。
敗退要因を省みる。
全力を出せる状態に無かったこと。
脱水、腰の痛み、シューズ。
不思議な勝ちあり、不思議な負けなし。

もし、シューズが脱げてたら。
腰どころじゃ無かったなと震える。
結果オーライ。
生きてれば、またトライできる。
新しい場所、遠い場所、知らない場所。
そこへ行けば、発見と出会いがある。
視野は広がる。
観念がほぐれる。
そこから、もたらされる何かが嬉しい。
さて、次はいつにしよう。
腰の痛みが取れたらかなと手帳を開く。
この辺りかなと、予定を描き込む楽しさよ。
To doに、水2ℓ&シューズと書き添える。
晴れた日に、天空岩の上で。
青空を、少し近くで見ることを思い描いて。