見上げたら、花が咲いていた。
今日の心はどうしたものか とびあがりはねあがり とどまるを知らない。
「幸せについて」谷川俊太郎
赤いツツジに心弾む。
なんとなく、今日は登れる気がした。
右手クラック、左手カチの馴染みのスタート。
最初の一歩目が大事だからと、しっかり立ち込む。
左手を飛ばしたら、右手を寄せて、レイバック体制となっていく。
慎重にスタンスは踏むけれど、緊張はしていない。
自動化されたムーヴでリップ手前まで到達する。
ここから、何回も落ちた、今日も落ちた、でも繰り返した。
そのうちに、花が咲く木の根本に指が入る。
右手を必死にプッシュして、スメアしながら、マントルを返した。
僕は僕でよかった。
そう思えた。
苛々したり、情けなかったりすることも必要な過程だったのだろう。
指では数え切れない日数を要したけれども。
恥ずかしいけれども、誇らしい。
あきらめなかったから。
今日という日とツツジの赤を忘れることはないでしょう。