共感。

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例年よりも早い梅雨入り。

この時期になると思い出す。

痛いスタートホールド。

憂鬱な天気予報と共に、シーズン開始。

そう、石の人の季節到来だ。

 

1日目。

毎年、ジャミングが痛くないんじゃないかと期待する。

そんな甘い話があるわけもなく、安定の痛さ。

勘を取り戻しつつ、マントル練習の最中。

グキっと音を奏で、グニャっと曲がる足首。

捻挫し、ひょこひょこ下山。

 

2日目。

足首に不安を抱えつつ、登り始める。

ホールドを触ると、懸念が吹き飛ぶ。

うん、大丈夫。

遠いカチも止めて、マントル突入。

手を入れ替えたり、寄せたり、試行錯誤する。

体は横になる気配が微塵もないまま帰宅。

 

3日目。

アプローチを歩きながら、ムーヴを練る。

あれをこう掴めばと、イメージを固める。

しかし、下部をこなせずにふてくされる。

少し休んで、スタンス微調整して、ジャムる。

スローパーを中継して、カチに右手を飛ばす。

足が切れたけれども、体は剥がれない。

リップに手をかけ、右足をヒール。

固めてたイメージ通りにムーヴを繰り出す。

自然と体が真横になっていく。

 

10年以上、握り続けた痛いスタート。

もう指をねじ込まなくていいのか。

そう思うと、ホッとする一方、さみしくもある。

 

1日目に捻挫した影響で、ずっと不安が付き纏う。

ケガをしたマントルに取り組む。

やっぱり勇気がいる。

不安を押し退けての完登。

石の人は、精神的に鍛えてくれたと思う。

 

改めて、その恩人を見上げた。

ここをいってごらん、いけるもんならな。

そう語りかけてくるような立ち姿。

なかでもボルダー台地が始まるところにある石の人は、難しいジャミングから始まり、甘いへこんだホールド、ヒールフックをかけ体が横になるマントリング、いい下地と最高の課題だ。

岩と雪No.169(1995.4)P13-20

最高の課題か。

確かに、そうだなぁ。

草野さんに、本当の意味で共感できた。

そんな、気がした。

心の里帰り。

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福島生まれ、宮城育ち、沖縄仕上げ。

それが、我が半生。

この3つの場所で、出会った人たちが自分を形成しているんだな。

そんなことを考えた3泊4日の沖縄ツアー。

 

ジャック•ジョンソンにハマったこと。

へろへろになりながら過ごした研究室。

具志頭と辺戸岬でのクライミングの日々。

青い空、大きな太陽の下、さわやかな潮風とともに思い出が流れる。

 

ラジオから流れるジャック•ジョンソンの”Traffic in the sky “。

偶然ってあるもんだなと、ウチナーグチのパーソナリティに心の中でありがとう。

東廻りで北上すると楚洲の看板。

暑い中、ウコン掘りをしたけど、もうやりたくねぇなと懐かしむ。

辺戸岬に行けば、知り合いと再会し、リードをさせてもらう。

相変わらずのトゲトゲホールドと友人が、岩登りにのめり込んだ日々を思い出させる。

 

帰りたくないな。

その一方で、東北シックにかかるのがわかる。

帰りたいな。

福島、宮城の寒さに触れれば、また沖縄が恋しくなるのに。

帰りたくないよで、帰りたいよ。

そう言わせてくれる場所と人の存在。

そのありがたさたるや、この上なし。

豊田遠征-生きててよかった、そんな夜を探して-

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遠足前の小学生のよう。

心を踊って、眠れない。

久しぶりの豊田遠征。

テーマ曲は、フラカンの”深夜高速”。
“生きててよかった、そんな夜はどこだ”

さあ、名古屋へ。

 

一番遠征で来てる岩場が豊田。

といっても、大半が出張ついで。

純粋に登り目的は初めてかも。

で、まともなシーズンも初。

気合いが入らないわけがない。

 

もう何年も前からやり続けてる文明開花。

ムーヴを一から練り直しながらマシンガントライ。

お前、指皮大丈夫なのか。

と心配されつつ、カチを握る。

温泉に早く行こう。

とプレッシャーをかけられても、半ば無視してスタンスを踏む。

居残りでいいで。

という言葉に甘え、割れた爪をテーピングでぐるぐる巻く。

 

つるつるの指皮で、細かいホールドを握る。

第一関節に親指を添えて、もう外れんなと。

寒さで感覚のない足で、テカテカの結晶を踏む。

グリグリねじ込み、信じてるよと。

欠けた爪先で、ガバを掴む。

もう離すもんかと。

 

ままなりそうで、ままならない。

努力じゃ、どうにもならないこともある。

だけれど、たまに、こうして何とかなる時がくる。

だから、頑張れる気がする。

5年の月日を経ての完登。

自然と涙が流れた。

 

夜は、登りの話と各地の土産を肴に乾杯。

とっとと夜が明けて。

さっさと朝よ来い。
そんな風に、やさぐれてた。

もうちょい、もうちょっとだけ、この夜が続いて欲しい。

こう願うのは、いつ以来だろう。

 

でも、名残惜しい夜は去っていく。

ああ、楽しかったなって。
また、陽が登る。
さあ、頑張ろって。
んで、夜の帳がまた下りる。
Good night じゃなくて、Bad night もある。

Too bad night だってあるけれども。

たまには、こんな夜を過ごしたい。

 

お世話になったみなさま。

素敵で、楽しい夜をありがとう。

小川山遠征-チリも積もれば山となるの巻

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オレって、センス無いなぁとつくづく思います。

長年やってるだけで、何だかパッとしませんね。 

今回の小川山でも、相変わらずですが、続けてて良かったなと思いました。

 

15年前に買った雑誌を読み、憧れた課題を登れた。

当然なんですけど、始めた頃から比べたら、段違いに強くなれたんだなと実感出来ました。

技術や体力もそうですが、精神面も少し成長したような気がします。

前だったら、登りたい課題があったとしても、一人で小川山には行かなかったかもしれません。

そういう、行動を起こせたこと自体が成果だと考えてます。

 

とはいえ、パッとしないのは相変わらず。

結局、3日間で登れたのは、3課題くらいでした。

オレの15年なんて、チリを積み重ねてきたようなものです。

だけれども、チリも積もればホコリとなる。

気がついたら、大きくなっている椅子の足のゴミのようなクライミングが出来ればなんて思いました。

「お前、いつの間にでかくなったんだ。」

と言われる憎らしいワタゴミみたいなね。

 

派手なクライミングは出来ないし、スケールの小さなことしかやらないかもしれない。

だけれども、野に咲く花のように、地味に、質実に、やっていければ良いですね。

さて、来年からはTwo monks に挑戦します。

先は長いかもしれないけれど、やり続けたいですね。

また、来ます。

遠征中に、お世話になったクンペーさんと若林さんに感謝。

ありがとうございました。

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小川山遠征-ハートに火をつけての巻。

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昨日の敗退の不甲斐なさ。

今日も駄目だろうという不安。

腰は痛いし、筋肉痛。

どうも、やる気が出ない。

ちょうど、クリーンクライミング小川山というイベントが開催されていたので、気分転換に参加しました。

 

杉野さんの挨拶。

兼原さんの講習。

話の内容もさることながら、二人からほとばしるクライミングが好きなんだなぁというオーラが良かったです。

消えかけていた自分のモチベーションが、ぷすぷすとくすぶるのを感じました。

 

とはいえ、どうせ駄目だろうという気持ちを抱えたまま、クジラ岩へ。

若林さんと合流し、緑のマントのトライを見学。

「あと何年かしたら登れるか。」

とさらりと言いながら、体現してきた立ち姿を見て、ようやくハートに火がつきました。

 

前日の反省を踏まえて、ムーヴを修正。

ポケットに足を突っ込む作戦へ。

遠いクロスでピンチをつまみ、右手をプッシュ。

左足をポケットにねじ込み、右足を上げていく。

体制が安定したところで、ピンチをアンダーに持ち替える。

後は、夢中でポケットに飛びつき、必死にマントルを返しました。

ようやく、グロバッツと課題を共有することが出来ました。

 

あの時、あの雑誌を読み、憧れた課題。

その上に自分がいる。

この感動は、何にも代え難いです。

少しは、強くなれたんだなと思うと、ちょっと涙ぐみました。

ちょっとだけれど、成長出来た気がした1日でした。

 

 

小川山遠征-林の中での巻

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1年半振りの小川山。

ここには、死ぬまでに登りたい課題が二つあります。

グロバッツスラブとtwo monks。

これは、どうしてもやりたいです。

もちろん、理由は見た目がかっこいい。

以上。

と言いたいところですが、初登者の影響が大きいです。 

 

グロバッツスラブは、初めて買ったロクスノに載っていたのを今だに覚えてます。

一本指のポケットなんて持てるんだと驚きました。

Ninja の記事を読んで、かっこいいよ、グロバッツと素で思いました。

 

two monks は、クリス•シャーマが開いた課題です。

自分が登り始めた頃のスターといえば、デイブ•グラハム、トミー•コールドウェル、そして、クリス•シャーマだったと個人的に思います。

Dosage も出たばかりで、アホみたいに観てました。

特に、シャーマのRealization は、鳥肌が立つくらい衝撃でした。

 

いつか、ああいう風になりたい。

きっと、なれる。

そう、一度は思いを抱くのではないでしょうか。

影響を受けたクライマーに近づける(そんな気がするだけ)。

まぁ、理由は何にせよ、登りたいものがあるのは良いことです。

 

今日は、グロバッツスラブをメインにトライ。

もう何度、この林の中のボリダーにきたことか。

左足よ、もう少し、もうちょい、上がってくれ。

そんなことを繰り返している内に、心の灯火が揺らぎ始めたので敗退。

経験上、独り言が多くなった時は登れないので移動しました。

少しだけ、かじったTwo monks 。

得意のカチも、よれよれで、指が開いてしまう。

不完全燃焼で終わりました。

 

小川山に来る理由は、この二つだけ。

だけれども、まだまだ来ることになりそう。

毎回、自分の弱さに意気消沈してしまいます。

だけれども、諦めずにやり続けよう。

初登者の二人を尊敬するのは、今だに第一線で活躍していることです。

ストイックなグロバッツと笑顔が素敵なシャーマ。

強くはなれなくても、こういう部分は見習いたいものです。

その体現が、小川山に来る本当の理由なのかもしれません。

小川山遠征-風をあつめての巻

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たまに、どこか遠くへ行きたい気分になる。

そういう風が、心に吹いたら、出かけよう。

そう考えるようになりました。

行きたいと思った時が、行くべき時期なんだろうなと。

新田次郎さんの小説「武田信玄」を読み、広告でシュテファン•グロバッツさんの姿を見たら、行き先は決まったようなものです。

ということで、長野へ。

 

そんな場合じゃない。

と、これまで心の風に抗ってきました。

じゃあ、どんな場合だったのよと聞かれても、今となってはわかりませんが。

とにかく、必死にしがみついていたのでしょう。

逃げたら負け、というくだらない意地にとらわれて。

時には、一度手を離して、遠くから見た方が良かったのですが。

そもそも、離れることは、逃げるのではなく、間合いを取ることですしね。

 

心に風が吹くのは、何かに息詰まっている時のような気がします。

周りが見えてないから、ちょっと視野を広げてごらんという合図ですね。

近頃は、クライミングも狙いの課題に手詰まり、シューズのソールを消費するだけでした。

もちろん、諦めたわけではありません。

ちょっと距離を置いてみる。

そういう時期なのでしょう。

 

"風をあつめて、蒼空を翔けたいんです。"✳︎

はっぴぃえんどを口ずさんで、磐越道をひた走る。

その蒼空が、小川山というのは、何ともスケールが小さい気もしますが。

でも、その人が行きたい場所に、小さいも大きいもないですね。

行きたいと思った時に、行きたい場所へと向かった。

たまには、風に身を委ねる。

その気持ちを大事にしたいです。

 

✳︎はっぴぃえんど  風をあつめて