Oui!

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フランスは怖い国。

そういうイメージで訪れた。

何かしら盗まれるだろう。

まあ、生きて帰れれば良いやという覚悟で飛行機に飛び乗った。

空港に降り立ち、約2週間を過ごした感想は、”また来たい。”だった。

 

右側運転とローターリーは怖かったし。

バイクのおじさんに罵詈雑言を浴びせられたのは腹が立ったし。

振り返ると、タクシー代金をボラれたのも悔しいし。

嫌なこともいろいろあった。

パンやチーズや果物は安くて美味しいし。

落とした携帯電話を届けてくれたり。

怪しげな英語とフランス語を理解しようとしてくれたり。

嬉しいことがたくさんあった。

 

来てみないとわからないことだらけだなと改めて思う。

日々、先入観に囚われて生きているなと実感する。

それは、フランスという国に対してでもあるし、フランスの方に関してでもあるし、自分自身についてでもある。

フランスへの恐怖は、流言飛語による影響だったし、もちろん怖い面もあるけれど、それよりも温かい面が印象深かった(自分は良い面しかみてないかもだが)。

自身についても、オレって意外とタフじゃんという場面もあれば、何てクズなんだという場面もあった。

その場に居合わせないと、その国のことも、人のことも、自分のことも、わからないことばかりだ。

 

一人で来たというのも功を奏したかもしれない。

もちろん、いろんな人の助けがあって準備・出発ができたのは確か。

でも、実際に自分であれこれ考えて行動したのは良い経験だったと思う。

今回が、本当の意味で初めての一人旅だったのかな。

いろんなことがあったけど、たくさん楽しかった。

最初の一人旅が、フランスで良かった。

また、来たいか?

そう問われたら。

”Oui !”

と、声高らかに答えるだろう。

 

そんな旅でした。

ケガなく。

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ケガなく、楽しく、登る。

それが自分のモットー。

ライミングは危険だから、そう思う。

多分、無理すれば落とせるという課題はある。

例えば、ハイボールで最後の1手だけが悪いというライン。

その一手は、ギリギリで出してはならない。

その一手は、確信を持って出すべきものだ。

 

Big gymというラインと出会った。

高さは7〜8m、グレードは6c、ホールドは明確、リップはガバ。

決して登れないレベルではない。

でも、登れなかった。

それは、リップがガバとわかっていながらも自信を持って1手を出せなかったから。

その最後も難しいものではないのだけれど。

捨て身で出せば、岩の上に立っていただろう。

でも、そうすべきではないと判断した故の敗退。

 

それが、今の実力なんだなと感じる。

このムーブをギリギリで出すようなら、登るべきではない。

そんな自分を情けないと感じる人もいるだろうけど、ケガをするのは自身のモットーに反するから。

逆を言えば、このムーブを確信を持ってこなせるように鍛え直さなきゃなと思う。

一人で登ることが多いがために生じるジレンマでもある。

無理して突っ込みたい気持ちがある一方、ケガをしてはならないという信条のやり合い。

 

”ひとり攀じ登ればいいじゃあないか、ひとりで攀じ登れないようなら、やめたらいいんだ”(孤高の人新田次郎

レベルは違うけど、そのような気持ちもある。

その精神を体現できるのが、ボルダリングなのかなと考えたりもする。

ブローでの岩登り10日間も終了。

目標を全ては達成できなかったけれども、ケガなく、楽しく、登れた。

そして、もっと強くなりたいと思わせてくれる日々だった。

歴史と伝統。

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ブローに来てから7連登。

疲れも宿題も溜まってきた。

とはいえ、7aをちらほら落とし、思ったよりも調子が良い。

特に、ブロー最初の7aであるLa jokerは目標だったので嬉しい。

美しい森と岩の中で、伸び伸びとトライできるのが楽しくて仕方ない。

エリアを歩いていると、様々な人達に出会う。

カップル、家族連れに、幼稚園児。

目的も年齢も千差万別。

そんな中、クラッシュパッドを背負った人間が闊歩する。

クライマーが森に溶け込んでいる環境が素晴らしい。

 

日本では、クライマーは異質な人種として扱われているような感じがする。

「自然の岩を登るんですか?すごいですね!」

職場、床屋やいろんなんところで言われたりする。

まあ、大したことでもないし、危ないし、ロクでもないことなんだけどな。

と、逆に恐縮するけれど、フランスはそれがない(ブローだからと思うけど)。

ライミングが日常に浸透しているようなイメージ。

 

だから、地元だと何となくコソコソとした気持ちでクライミングをしてしまう。

「見つからないように。」といった感覚だろうか。

ライミングが白か黒かといえば、日本では黒に近いグレー、フランスでは白に近いグレーという感覚。

ロクでもないことをしてるのは同じでも、そんな差異があるような。

それは、歴史と伝統の重みがあるからだと思う。

La jokerが登られたのは、1953年で70年前以上の話。

それと、比較すると地元のクライミング史は浅い。

その差異が、自分の感じたブローの違いなんだろう。

 

歴史は積み重ねるもので、伝統は伝えていくものだ。

そう、今も、地元クライミング史の1ページの中に自分はいる。

先輩の教授を反芻し、後輩に繋いでいかなきゃななんても考える。

フランスで、日本のクライマーは強い。

そう何人からも褒められた。

だけど、ワールドカップの金メダルより、日本の岩登りには誇れるものがある。

ライミング後のクリーニング、地元との交流などなど。

そんな地元の歴史と伝統を大切に、太く紡いでいきたい。

もちろん、良い歴史もあれば、悪い歴史もあるけれども。

成功や失敗の合計が伝統なのかな。

それが、ブローで1週間過ごして考えたりしたこと。

Real thing.

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どきわくどきわく。

不安と期待が拮抗する旅立ちは、スパイスとハーブが効いている。

満席につき、急遽ロンドン経由になるフライト。

名前を間違えたホテル。

タクシー乗り場に突っ込んで怒られたレンタカー。

慣れない右側通行と理解できない道路標識。

言葉が通じないホストに仕草でのコミュニケーション。

いても立ってもいられず、ブローの森へ。

 

ああ、Real thingの世界にきたんだなと思う。

初めて見たクライミングビデオの場所。

ベン・ムーンとジェリー・モファットがタイツ姿で暴れまわる映像を思い出す。

美しい森。

散見する巨大ボルダー。

シワシワのホールド。

それが、今、目の前に。

泣くかと思ってたけど、そんなことなかった。

 

意外と簡単なことだったんだなと思う。

休みを取って、スマホで飛行機と宿と車をピピっと手配するだけ。

それだけのことだったんだなと感じる。

何を尻ごみしてたんだろうって自分を責めたくなる。

けれども、そんな簡単なことほど、困難なのもわかってる。

何気ない目標、計画、約束を実現するのが割と難しいのを経験してきたから。

 

なので、現実にブローでボルダリングをする自分を認めてやりたい。

「初めて見たクライミングビデオがブローだったから、初めての海外クライミングもブローにした。」

遅くなったけれど、体現したのだから。

これからも、目標や計画や約束を現実に。

すぐには出来なくても、いつかは出来る、オレにも出来る。

何気ないことをReal thing に。

今がその時。

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あと二ヵ月後にフランス。

のろのろと時間と支度が進行していく。

その都度、”行くんだよなぁ。”という実感が湧いてくる。

よくよく考えると、準備はそうでもない。

休みとって、飛行機のチケット抑えて、レンタカー手配して、宿を決める。

一番大事なのは、気持ちを整えること。

 

「行きたい。」じゃなくて、「行こう。」と思わなきゃ駄目。

なんて、諭されたのを思い出す。

この二つの言葉の境界線がどこにあるのかわからないけど、実行するか否かの差な気がする。

昔から、ブローに行きたいと思ってた。

だけど、地を踏んでもない。

今は、ブローに行こうとしている。

そして、岩を触ろうとしている。

いつの間に、境界線を越えていたのだろうか。

 

誰だって、どこか行きたい場所がある。

だけれども、実際に行けない人もいる。

自分もその一人で、それを情けないと責める時もあった。

でも、やっぱり、どうしても、行けない時ってある。

家庭、仕事、経済、いろんな理由で。

それは、その時ではなかったのだけなんだろう。

 

もっと早く来ていれば。

なんて、感じるかもしれない。

でも、今が、その時だったんだと思いたい。

若い時に行けば良かった。

なんて、後悔するかもしれない。

でも、今が、人生で一番若いんだと考えたい。

帰国したら、職場に机がなくなっても、預金残高を見て顔が青くなるとしても。

ブローに行こう。

今が、その時なのだから。

共感。

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例年よりも早い梅雨入り。

この時期になると思い出す。

痛いスタートホールド。

憂鬱な天気予報と共に、シーズン開始。

そう、石の人の季節到来だ。

 

1日目。

毎年、ジャミングが痛くないんじゃないかと期待する。

そんな甘い話があるわけもなく、安定の痛さ。

勘を取り戻しつつ、マントル練習の最中。

グキっと音を奏で、グニャっと曲がる足首。

捻挫し、ひょこひょこ下山。

 

2日目。

足首に不安を抱えつつ、登り始める。

ホールドを触ると、懸念が吹き飛ぶ。

うん、大丈夫。

遠いカチも止めて、マントル突入。

手を入れ替えたり、寄せたり、試行錯誤する。

体は横になる気配が微塵もないまま帰宅。

 

3日目。

アプローチを歩きながら、ムーヴを練る。

あれをこう掴めばと、イメージを固める。

しかし、下部をこなせずにふてくされる。

少し休んで、スタンス微調整して、ジャムる。

スローパーを中継して、カチに右手を飛ばす。

足が切れたけれども、体は剥がれない。

リップに手をかけ、右足をヒール。

固めてたイメージ通りにムーヴを繰り出す。

自然と体が真横になっていく。

 

10年以上、握り続けた痛いスタート。

もう指をねじ込まなくていいのか。

そう思うと、ホッとする一方、さみしくもある。

 

1日目に捻挫した影響で、ずっと不安が付き纏う。

ケガをしたマントルに取り組む。

やっぱり勇気がいる。

不安を押し退けての完登。

石の人は、精神的に鍛えてくれたと思う。

 

改めて、その恩人を見上げた。

ここをいってごらん、いけるもんならな。

そう語りかけてくるような立ち姿。

なかでもボルダー台地が始まるところにある石の人は、難しいジャミングから始まり、甘いへこんだホールド、ヒールフックをかけ体が横になるマントリング、いい下地と最高の課題だ。

岩と雪No.169(1995.4)P13-20

最高の課題か。

確かに、そうだなぁ。

草野さんに、本当の意味で共感できた。

そんな、気がした。

心の里帰り。

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福島生まれ、宮城育ち、沖縄仕上げ。

それが、我が半生。

この3つの場所で、出会った人たちが自分を形成しているんだな。

そんなことを考えた3泊4日の沖縄ツアー。

 

ジャック•ジョンソンにハマったこと。

へろへろになりながら過ごした研究室。

具志頭と辺戸岬でのクライミングの日々。

青い空、大きな太陽の下、さわやかな潮風とともに思い出が流れる。

 

ラジオから流れるジャック•ジョンソンの”Traffic in the sky “。

偶然ってあるもんだなと、ウチナーグチのパーソナリティに心の中でありがとう。

東廻りで北上すると楚洲の看板。

暑い中、ウコン掘りをしたけど、もうやりたくねぇなと懐かしむ。

辺戸岬に行けば、知り合いと再会し、リードをさせてもらう。

相変わらずのトゲトゲホールドと友人が、岩登りにのめり込んだ日々を思い出させる。

 

帰りたくないな。

その一方で、東北シックにかかるのがわかる。

帰りたいな。

福島、宮城の寒さに触れれば、また沖縄が恋しくなるのに。

帰りたくないよで、帰りたいよ。

そう言わせてくれる場所と人の存在。

そのありがたさたるや、この上なし。